新型コロナウイルスが猛威を振るう中、多くの選手たちが練習できない状況が続いている。
いつ練習が再開されるのかもわからない中、追い討ちをかけるように全国大会・関東大会などの試合も中止。選手たちもモチベーションのやりどころに困る、前代未聞の事態となっている。
この状況下で危惧すべきは、筋力・技術力の低下はもちろん、フェンシングに対するモチベーションが下がってしまうことだ。あまりに練習できない日々が続けば、競技そのものを諦めてしまう人も出てきてしまうかもしれない。
だからこそ今、コーチが動かなければいけない時だと筆者は思う。では今コーチが選手たちに何をやってあげられるのか。
それは『オンラインレッスン』だ。筆者も4月から始めているが、これがかなり練習になる。
今回は筆者がこの1ヶ月間で感じた、オンラインレッスンの可能性についてお話ししていく。
『フェンシングの練習ができなくて困っている。』『子供のモチベーションを高めたい』という方は、是非ご一読いただきたい。
目次
自粛期間中だからこそ見えたオンラインレッスンの可能性
オンラインレッスンの可能性について理解いただくためには、まずことの経緯からお話ししなければならない。
筆者がオンラインレッスンを開始したのは、今から1ヶ月ちょっと前の4月中旬。
フェンシングの練習ができない中、教え子たちにモチベーションを下げてほしくなかったのが始めたきっかけだった。
オンラインレッスンとは、外に出ることなくビデオ通話を通して、先生が生徒に対して指導を行うというもの。
ただ、筆者自身オンラインでフェンシングのレッスンなどしたことがなかったので、最初は手探りで始めることに。
練習メニューを組み立て、筆者が運営する練習場『墨田フェンシングクラブ』の選手たちに一対一で指導をすることにした。だが、フェンシングというものは対面式でなければ行うことができず、練習になるかは正直微妙なところ。
全く練習にならず、むしろモチベーションが下がったらどうしようと不安に思いながら練習を開始した。するとどうだろう、思いのほか練習になっている。
ビデオ通話している教え子も、それまでの自粛期間中に身体を動かせていなかったようで、アタック動作などがかなり鈍っていたが、全てのメニューを終えた頃には、やり切った達成感で満足そうだった。
それからフットワーク・アタック動作・ディフェンス・壁突きの練習を中心に指導し、飽きがこないようカメラの前に立ってもらって、筆者が突きにいった箇所を守るというトレーニングも加えていった。
すると、教え子たちにもある変化が起こった。日々の日常にオンラインで行ったトレーニングを取り入れ始めたのだ。
それから今に至るまで一対一の指導を繰り返してきたが、回数を重ねるごとに教え子たちが上手くなっていくのを実感したし、何よりもモチベーションが落ちていない。
ここまででお気づきの方もいるだろうが、オンラインレッスンの可能性とは『指導を受ける側の意識を大きく変えることができる』ということだ。
オンラインレッスンがフェンサーの意識を変える
これまで対面式での練習がメインだったフェンシングでは、オンラインレッスンにある種の拒絶感があったのだと思う。実際オンラインレッスンを実践している練習場は、筆者が把握している限り3チームほど。
しかし墨田フェンシングクラブでオンラインレッスンを実践した結果、教え子たちのモチベーションは現在進行形で高まっている。アタック動作が速くなった選手、オンラインでよく質問してくるようになった選手、フットワークが格段に良くなった選手など、オンラインレッスンが教え子たちの意識を変えたのは、疑う余地がない。
※最近では、グループレッスンをしてほしいという要望も聞かれるようになった。
ではなぜオンラインレッスンがフェンサーの意識を変えたのか?それは『対面式のように剣で突きあうことができないため、より頭を使って練習しなければいけない』からだ。
頭を使うということは何も相手の裏をかくというだけではない。いかに自分で試合の場面を想定して”自身の弱点”を振り返ることで、より明確に何が足りないかを理解し、それを補うためにする練習も、立派に頭を使った練習だ。
では、対面式の練習とオンラインの練習は具体的に何が違うのか?
次の項目では、その違いを知っていただくために、それぞれのレッスンのメリット・デメリットについて紹介していく。
対面式レッスン・オンラインレッスンのメリット・デメリットを知ろう
対面レッスンのメリット・デメリット
●メリット
・コーチが教え子の剣を受けることができ、剣技の精度があがる。
・選手の構え、突き方など、違ったところがあれば、すぐに修正することができる。
・色んな選手たちとファイティング(試合形式での実践練習)することができる。
●デメリット
・ファイティングをしている時、自分の得意な攻撃がわからず、どういった戦術で戦えばいいのか、わからなくなる時がある。
・練習場まで通う必要があるので、手軽ではない。
・場所に依存してしまう。(練習場以外では練習しない)
オンラインレッスンのメリット・デメリット
●メリット
・剣を突く的を作ってしまえば、アタックの打ち方から試合でも使えるフットワークなどを、自宅で手軽に受けることができる。
・コーチの工夫次第で、対面式の練習と同様、反射神経を鍛える練習をすることができる。
・動画を一緒に見ながら”戦術の指導”ができる。
●デメリット
・受ける側の部屋が狭いと、練習場所を作るのに苦労する。
・実際にコーチが剣を受けることができないので、突きの威力などの感覚的なものから、ディフェンスの際に剣を使った防御など、対面式ならではの指導ができない。
・ファイティング(実践練習)ができない。
オンラインレッスンと対面レッスンを分けて考えてはいけない
記事の冒頭でお伝えした通り、オンラインレッスンをしている練習場が少ないのは、対面レッスンのような練習ができない分、やっても意味がないと感じてしまう人が多いからなのかもしれない。
しかし、そもそもオンラインレッスンと対面レッスンを分けて考えること自体間違っている。この2つのレッスンは、それぞれの欠点を補うことができるからだ。
例えばオンラインレッスンでは、実際に選手の剣を受けることできない。ファイティングなどの実践練習をすることも不可能だ。代わりに具体的な場面でどのような技を出せばいいかを伝えることができる。
最近のビデオ通話では、動画を共有することもできるので、練習前にその選手の弱いところ、ピストのどの位置にいる時に突かれているかなどを具体的に伝えることで、選手・コーチともに、課題解決への意思共有もできる。
そうなれば課題解決のために、コーチはアタック、ディフェンス、構え、フットワークなどをトータルで教えてあげればいい。
これで日常に戻ったら、対面練習とオンラインレッスンを交互にやれば、練習効率も飛躍的に上がるだろう。
つまりオンラインレッスンができるようになれば、今までなかったフェンシングの新たな練習体系を見出すことにつながるというわけだ。
今後はオンラインレッスンをとりいれたレッスンが主流になる
今後はフェンシングもオンラインレッスンを取り入れたレッスンが主流になる。
もちろんコロナが長引くことも予想されるが、ビデオ通話という手軽な方法でコーチと選手がやりとりできれば、再び自粛期間に入っても練習することができる。
さらには遠くにいる人間と話せることもできるので、遠いところにいる選手の指導も可能となるだろう。
現在筆者の練習場、墨田フェンシングクラブでは、日本代表のコーチにも協力してもらって、より専門的な指導ができる体制を作っている。
種目はエペが専門だが、これからはフルーレ、サーブルのコーチとも協力していく予定だ。
興味のある方は、一度下記URLからオンラインの指導を受けていただきたい。きっとこれまでの価値観が変わることだろう。