フェンシング3種目の1つ、エペでは戦術が重要であることをご存知だろうか?
フェンシングは『フルーレ』、『エペ』、『サーブル』という3つの種目に分かれており、その中でもエペは全身どこを突いてもいいので、一番実戦に近い種目と言われている。
ただ先に突けばいいといいう性質上、レッスン、ファイティング(対面での実践練習)を積み重ねて、早く剣を捌けるようにしている選手が多いようだが、それではスピードに頼りすぎて剣の軌道が単調になるため、本当に強い選手相手には通用しない。
そこで重要になってくるのが“戦術”だ。
この記事では、エペにおける戦術がどれだけ重要で、どのようにして身につければいいのかを解説していく。
今エペを習っていて、もっと実力をつけたいという選手は、ぜひ実践してみてほしい。
エペにおける戦術の重要性
まずエペの戦術とはどのようなものか説明していこう。
エペをしている選手は大きく3つのタイプに分かれる。基本的に相手を追い詰めてアタックを決めていく『攻めタイプ』、後ろに下がりながら相手が突いてくる箇所を誘導し、最後に攻撃を防いで相手を突く『守りタイプ』、相手の出鼻に合わせて攻撃を繰り出す『カウンタータイプ』だ。
例えば自分が『カウンタータイプ』だった場合、試合においてまず相手を分析するところから始める。相手が積極的に突いてくる選手であれば『攻めタイプ』。前に出てこられると厄介なので、後ろに押し込みながら、真っ直ぐ突いてくるのか、軌道を変えて突いてくるのかを見極めてカウンターを合わせる。
この時、戦術を考えておかないと、攻めタイプにいいように後ろに押しやられてしまい、文字通りサンドバック状態になってしまう。
特に攻めタイプは後ろに距離があればあるほど、切り返しで攻撃力を上げてくるので、早々に対処しないと勢いに乗った渾身の攻撃を受け続けることになる。
戦術を駆使すれば、格上の選手も戦術次第で倒せる
筆者は元々JISS(オリンピック選手が練習する場所)で練習していた経験があり、そこで得た戦術の使い方を今のコーチングで活かしている。
2021年1月にあったJOCジュニアオリンピックカップでは、教え子の奮闘と戦術の効果もあって、3位に入賞した。
その時も、当たり前のように格上の選手と当たったが、その選手の特性、癖、攻撃の軌道などを見切り、最後に勝利を手にすることができた。
戦術は一見難しそうに見えるが、理解のある人間が教えれば、同じように身につけることが可能だ。
今、フェンシング界をみていると、この戦術を使った戦い方は、トップコーチしか教えていない印象を受ける。
エペの実力を身につけたいという人には、この“戦術”を身につけることをオススメしたい。
戦術を身につけるには、まず“自己理解”から始めよう
戦術を見につける第一歩は“自己理解”から始まる。
言ってしまえば下記の項目だ。
①性格
②得意技
③一番剣を突きやすい距離
①の性格は、そのままだが自分の性格について考えてほしい。例えば『勝気・慎重・真面目・負けず嫌い・遊び心がある』など、人によって様々だ。
自分の性格がわかったら次に②の得意技。エペでは『フレッシュ・ファント・振り込み・巻き剣・リポスト(※マニアックで申し訳ない)』がある。この得意技というのがかなり重要で、自身のフェンシングスタイルを象徴するものであり、磨けば必殺技にもなる自身にとって重要な相棒なので、しっかりと考えて欲しい。
最後に自分が突きやすい距離に突いてだが、これは『長距離・中距離・短距離』の三つだ。この距離も、戦術を組み込んでいく上で非常に重要なもので、戦う距離によってその人の戦術が決まってくると言っても過言ではない。
また、自分の得意な距離を理解することで、試合においてその距離をキープするだけで、ある程度有利に試合を進めることができるようになる。
この3つがわかった上で、初めて自分の戦術スタイルを明確に理解することができる。自分が『攻めタイプ』なのか『守りタイプ』なのか『カウンタータイプ』なのか。逆にどれかを理解しなければ、相手とどのように対決すればいいのかわからない。
エペの戦術を身につけたいという人は、まず上記の自己理解をしっかりと考えていただきたい。
ある程度わかったら、戦術に理解のあるコーチに相談するといいだろう。
筆者のいる墨田フェンシングクラブもこの戦術に関する指導をしているので、興味のある方は、下記のリンクから問い合わせいただきたい。
この記事が、全国のエペ選手の技術力向上のきっかけになれば幸いだ。