『子供に早く結果を出してもらいたい。』『最近なかなか試合で勝てないが、なにをしてあげればいいのかわからない。』
子供にフェンシングを習わせている方の中には、こうした悩みを持つ方もいることだろう。
メダリストの息子を育てた三宅 正博氏が考える『子供にフェンシングを習わせる親が心がけておくべきこと』について、同氏の体験談を交えながら、子供にフェンシングをさせる時に意識すべきことについてお話しいただいた前編に続き、後編では正博氏による試合に出場する子供に対して、親が心がけなければいけないことについて紹介していく。
この記事は2019年12月に行ったインタビューを元に作成している。本来であればもっと早い段階で公開する予定だったが、筆者の都合によりこの時期に記事として出すことになった。
目次
子供にフェンシングを習わせるうえで親が心がけなければいけないのは、”勝つために我慢すること”
1つ言えるのは、試合に向けて準備したり出場する試合数を絞ることは、勝つことよりも重要だということです。
現フェンシング日本代表で、インターハイを3連覇した松山 恭介選手のように、試合は連覇することで周りから英雄視されがちですが、開催される試合には大事なものとそうでないものがあることを認識しなければなりません。
ジュニアフェンサーで大事な試合と言えば、全国大会・東日本大会・関東大会の3つ。そこで結果を出すために、『試合選び・選手の強化練習・弱点克服』するための計画を立てる必要があるのです。
そのために私が一番大事だと思うのは『逆算形式で考える』ということ。
まず出場する試合を決めて、その試合に出る選手たちのレベルがこのくらいになっているだろうと予測を立てます。それに対して、自分の子供(選手)がどのくらいのレベルで、どのような練習をしなければいけないか?そのために、練習方法をどうするかということを考えて、出場予定の試合に向けて調整していくのです。
だからなんとなく試合に出てしまうと、練習で育てる時間もありませんし、試合で何が足りなかったのすらわかりません。
子供というのは成長するので、成長する過程を考えて、『この段階ではここまでできればいい』という目標設定を、親が正確にもっていなければいけません。
常に試合でメダルを取ることに執着してしまうと、子供の技術的なレベルが伸び辛くなってしまう。だからこそ、試合から逆算で計算して、試合の1ヶ月前にはこうしたことができてなければいけない。2ヶ月前までにはここまでできればいいといった感じで、”ただ勝てばいい”という考えではなくて、”こういうことができるようになって勝てた方がいい”という考え方のほうが、私は大切ではないかと思うのです。
もしも通用していないのなら、プリムを使いながら防御範囲を広げたりしてみる。こうした練習でやってきた技を活用して、点をとっていく取り組みこそが重要なのです。
ただ勝ちにこだわるだけではいけません。どういった内容で試合をするか、プロセスを見ることが先決。そういうところが我慢できない親御さんが、最近では多いように感じます。
ただ本当に強くあろうとするなら、子供が強くなるまで我慢しなければいけない。実際に子供にフェンシングをやらせた私はそう思っています。
子供にフェンシングをやらせて嬉しかったのは『上級生相手にも怯まず、メダルをプレゼントしてくれたこと』
そしたら準決勝まで残っていて、勝てばメダルなので、諒が私に『メダルをあげる』と言ってくれたんです。結果、準決勝で勝利し、決勝では敗れましたが、宣言通りメダルをプレゼントしてくれました。