フェンシングの剣は、一体どのようなものを買えばいいのか?
これはフェンシングを始めたばかりの頃であれば、誰もが悩むことだが、極端にいえば『折れにくいが高い剣』と『安いが折れやすい剣』どちらがいいか? ということだ。
当然、人によって答えは変わると思うが、この2つの選択肢こそ、剣を買う際、最初に知っておかなければいけないということを、まずお伝えしておきたい。
では、その選択肢を間違えないために、今回は剣を選ぶ時に知っておいた方がいい知識について一挙ご紹介する。
この記事が、これから剣を購入したいという方のお役に立てれば幸いだ。
目次
【知識①】剣には2つのタイプがある
フェンシングの剣には、『スタンダード』と『FIE』と言われる、2つのタイプがある。
各タイプの特徴は以下のようなものだ。
▼スタンダード・・・鉄のみで作られた剣。初心者が使うことが多く、安いので購入もしやすいが、錆びやすく、FIEに比べて折れやすいという特徴もある。
▼FIE・・・国際試合でも使える剣。フルーレ、エペで活用している選手が多い。スタンダードと比べてマラジン鋼(FIE公認の鋼材)が練りこまれており、ほとんど錆びずに剣自体も頑丈で折れにくくなっている。ただし、価格は高め。
では、それぞれの剣はどのような人に向いているのか?
その答えを聞くために、筆者がよくお世話になっているフェンシングショップ『フェンサーズ』のショップ店員さんから、剣を選ぶ際に知っておいた方がいいことと、分かりやすいように、同ショップで取り扱っている剣(今回は初心者でも始めやすいエペ剣)を具体例として、それぞれの違いについて詳しく教えていただくことができた。
【知識②】フェンサーズで取り扱っているエペ剣の種類
剣を選ぶ際の基準を分かりやすくするため、まずはフェンサーズが取り扱っている剣(全4種類)の紹介からさせていただく。
EPブレード(スタンダードタイプ)¥6,870(税別)
フェンサーズが扱う剣の中で最安値の剣。
安いがゆえに折れやすいが、『とにかく安い剣が欲しい!』『試合で剣が足りないので、予備として念のために持っておきたい』という人に需要があるのだという。
レオンポール エトワール(スタンダードタイプ)¥10,470(税別)
この剣の特徴は、剣の溝部分が”V字型”になっており、なおかつ軽いことだ。
剣が軽いと重量がない分、剣先がぶれにくくなるので、コントロールしやすいというメリットがある。
さらに剣を曲げてもV字の溝部分が横に伸びるように曲がるので、折れにくい性質を持つ。
フェンシングのベテランでも、国際試合に出なければ、このレオンポール エトワールを愛用するほど、実用性に優れた剣だ。
FIE レオンポール(FIEタイプ)¥18,940(税別)
『レオンポール エトワール』を国際基準にした剣。
FIE公認の「マラジン鋼」という素材を使用しており、スタンダードタイプの剣よりねばりがあり、折れにくい。
特徴はエトワール同様、剣の溝部分が”V字型”で、軽いということ。
スタイルなどのよっても変わってくるが、剣そのものが軽い分、剣先を細かく動かしたい方は、V字型の剣の方が扱いやすい。
FIE レオンポールBF(FIEタイプ)¥23,570(税別)
フェンサーズが扱う剣の中で、最高品質の剣。
頑丈で折れにくく、剣先もぶれないのでコントロールしやすい。
FIE レオンポール同様、FIE公認の「マラジン鋼」を使用しており、フェンシングの本場、フランスの『BF社』という企業も製造に関わっている。
※剣の裏側にBFのマーク(刻印)が付いている。
以上の剣の種類を踏まえた上で、どのような場合にスタンダードタイプとFIEタイプを買えばいいのか、ショップ店員さんの話を元に解説していきたい。
【知識③】剣の選び方は用途によって違ってくる
ショップ店員さんの話では、剣を選ぶのは用途に応じて違っていて、初心者は間合い(相手との距離)などがわからず、すぐに折ってしまったりするので、安い『EPブレード(スタンダードタイプ)』を買って、都度買い換える人もいれば、少しでも長持ちさせたくて『レオンポール エトワール(スタンダードタイプ)』を買う人もいるのだという。
お金に余裕のある人は、いきなりFIEタイプの剣を購入する時もあるが、始めたばかりの頃は、スタンダードタイプの剣を買う人が多いとのこと。
FIEを買うのはどういう場合?
国際試合に出たり、大きな試合で出るという場合であれば、FIE剣を購入する必要がある。
もしくは、一本の剣を大切に使いたいということであれば、最初からFIE剣を購入するのもあり。試合ではFIE剣を使う人が多い為、中学生から購入することが多いのだという。
高校や大学で現役として活躍している選手は、練習頻度も高く、剣に頑丈さが求められるので、必然的にFIEタイプの剣を使う選手が多い。
【知識④】剣選びでベストな方法
ショップ店員さん曰く、剣選びでベストな方法は、”実際に店舗に来て剣を触る”こと。
一番スタンダードな方法ではあるが、これに勝る方法はないのだという。実際、剣を郵送で送ってもらうと、自分のイメージと違うといったことが起こりがちだからだ。
近くにフェンシングショップがない時は・・・
フェンシングショップは全国でも数少ないが、もしも近くにショップがない場合でも試合会場で買うという選択肢もある。
フェンシングの試合は全国各地で行われることがあるので、試合によって各ショップが出店する場合がある。そうすれば、わざわざショップに行かずとも、その場で剣に触ることができるので、自分にあった剣を選ぶのに最適な環境だと言える。
出店情報は、各ショップのホームページに掲載されるので、もしも近くで試合などがある場合、確認してみてもいいかもしれない。
・フェンサーズ(取り扱いメーカー:レオンポール)
・東京フェンシング商会(取り扱いメーカー:アルスター)
https://www.tf-fencing.co.jp/
・KFE京都フェンシング用品(取り扱いメーカー:ウルマン、PBT)
http://www.kfe-fencing.jp/
【知識⑤】電話やFAXで剣を注文する際は、”固さ”に注意
もしも剣に触れずに購入する場合は、”剣の固さ”に注意しよう。
以前の記事でも紹介しているが、初心者や女性、子供、しなりのある技が得意な選手は、柔らかめの剣の方が相性がいい。
硬い剣だと、突いた時の反動が強く、肘に負担をかけてしまう恐れがあるため、女性、子供は特に注意が必要だ。
剣の固さは、大別して3つに分かれている。
・フレキシブル・・・一番柔らかい
・ミディアム・・・中間にある固さ
・スティフ・・・一番硬い
これらの剣を呼ぶ際、フレキシブルを『F剣』、ミディアムを『M剣』、スティフを『D剣(これだけなぜかS剣ではない)』という呼び方をしているので、もしも直接剣を触らずに購入する際は、店員さんに伝えてみるといいだろう。
※FIE剣のみ、これらのF、M、Dの記号が剣の裏側に記されているので、そこで確認する手もある。
〜豆知識〜
もしも試合が控えている場合は、試合一ヶ月前に剣を購入するのがショップ店員さんのオススメ。
その理由として、まだ新しい剣だと、どうしても硬かったり、自分のスタイルに馴染む柔らかさになっていない。
試合で使う際は、一ヶ月ほど練習で使ってみると、ちょうどいい柔らかさになるのだという。
まとめ
剣選びの基準は、これまでショップに聞いてみなければわからないことが多かった。
今回ご紹介した内容は、そんなブラックボックスとなっていた剣選びの知識をまとめた内容になっている。
最後にフェンサーズのショップ店員さんが言っていた言葉を紹介しておきたい。
『剣選びというものは相性であって、アルスター、ウルマン、レオンポール、どのメーカでも自分に合ったものを選ぶのがベストだと思うんです。剣選びには明確な答えはありません。
だからこそ重要なのは、まず”自分自身で各メーカーの剣に触ってみる”こと。
そうして気に入ったメーカーの剣を使うと、相性だけではなく、気持ちの面でもプラスに働くことがあります。
剣を使う時は、気持ちの面でモチベーションが上がるかどうかが重要なんです』
この記事が、あなたの最適な剣選びのお役に立てたのなら、書いた身として大変喜ばしく思う。