【初心者向け】フェンシング経験者の目線から語る、意外と知られていない剣の選び方講座(エペ編)

フェンシング エペ剣 男性

前記事、『【初心者向け】フェンシング経験者の目線から語る、意外と知られていない剣の選び方講座(フルーレ編)』にて、剣を選ぶ際は”長さ””硬さ”に注意して選ぶ旨をご説明した。

硬さに関して言えば、他の種目も同様であり、初心者には柔らかい剣がオススメと言える。

※柔らかい剣は、しなる反動が少ない分、初心者にも扱いやすい。
※硬い剣と比べ、柔らかい剣は鉄の配合率の関係上、軽くなる。

問題は“長さ”だ。

フルーレと違い、エペでは短い剣を使う人がほとんどいない。

※フェンシングの剣には、中学生以下の子供、短い剣を好む人のために、5段階で剣の長さが分かれている。下から1〜5号剣まであり、5号剣が一番長い。

その理由も含め、今回はフェンシング3種目中、最も初心者向けと言われる、エペで使用する剣の選び方について解説していく。

これからこの種目を始めたいという方がいれば、参考にしていただけると幸いだ。

エペとは?

フェンシング エペ選手

© Sergii Chernov – Fotolia

エペは、世界的にもっとも競技人口が多い種目であり、”先に突いた方が勝ち”という極めてシンプルなルールであることが特徴だ。

有効面は体全体(いってしまえば足の裏も)。フルーレ、サーブルのように攻撃権もないことから、初心者に一番オススメできる種目と言える。

エペの醍醐味は、なんといっても『駆け引き』に特化したプレイスタイルだ。

ルールがシンプルな分、そう簡単に踏み込んだ攻撃ができない。そのため、剣やフットワークで相手を乱し、スキができたところを突きにいく。

よくフェンシングは”筋肉を使ったチェス”に例えられるが、その要素を一番盛り込んでいる種目と言えるだろう。

エペについて詳しく知りたい方は、コチラをご参照いただきたい。

エペで使用する剣の特徴

剣の長さは110cm以下、重量が770gと種目の中でも最重量級。ガードの直径は13.5cm、ガードから先端までは90cm以下。

意外と知られていない剣の選び方

© julianpictures – Fotolia

エペで使用する剣は、三種目中最も太く、硬い

そのため、初心者がなんとなく硬い剣を使用すると、しなる反動が強すぎて、扱いが難しい場合がある。

ゆえに、『はじめは解らないから、なんでもいい』というのは危険で、エペを始めたばかりの時は、なるべく柔らかめの剣を選ぶよう意識してみよう。

柔らかい剣を使うメリット

柔らかい剣は、剣がしなりやすく、軽いことから、初心者が使うのに適している。

さらにやり始めの頃は、人を突くのをためらいがちなので、しなる反動が少ない、柔らかめの剣の方が、抵抗なく“突き”の練習を始めることができる。

上記の理由から、初心者には柔らかめの剣がおすすめできる。

※フルーレと一緒にエペをやっている選手も、振込みをよく使うことから、柔らかい剣を好む傾向にある。

どのようにして選べばいいのか?

柔らかい剣の選び方は単純で、ポイントを床につけて、剣をしならせてみる。その上で、自分の力で簡単に曲がるかテストしてみるのだ。

ショップで直接確かめるのがベストだが、フェンシングショップは全国的に少ないため、来店できない方もいるだろう。

そういう方は、ショップ店員に、『なるべく柔らかめの剣をお願いします。』と注文をつけておくのだ。

そうすれば、店員が要望に沿った剣を選んでくれる。

では硬い剣が向いている人とは?

硬い剣は、ストレートなどまっすぐ突くのが得意な人に向いている。

競技に慣れた経験者も、硬い剣を好む傾向にある。

その理由として、硬い剣はポイントがぶれにくく、ちょっとしたミスも許されない競技者にとって、使い勝手がいいからだ。

他にも、しなりの反動が強い分、しっかりとした突きごたえが欲しい人にも需要がある。

エペで短い剣を使う人がいない理由

はじめにご説明した通り、フルーレと違い、エペでは短い剣を使う人がほとんどいない。

その理由は、”短いと不利になる”のに加え、”子供たちに需要がない”ことが挙げられる。

順に解説していこう。

エペの試合では、選手同士が同じタイミングで突きあう「同時突き」がよく発生する。

そのため、剣が少しでも短いと、同時に突けるタイミングだとしても自分のポイントが届かないといった事態まで発生しうる。

ゆえに、エペにおいて短い剣(1〜4号剣)を使う人はいない。

※フェンシングの剣には、中学生以下の子供、短い剣を好む人のために、5段階で剣の長さが分かれている。下から1〜5号剣まであり、5号剣が一番長い。

では小学生などの子供はどうか? 実は子供たちの主流となる種目はフルーレのみで、試合もフルーレのものが大半だ。

また、始めるにしても小学生からエペをやる選手は少なく、最年少でも中学生から始めることが多い。中学生以上になると、剣の長さは大人向けの5号剣を使うのが一般的だ。

※中学生以下の場合でも、剣の長さは初めから長め(5号剣)がいい。その代わり、最初は重いと思うので、柔らかめの剣を選んだうえで、ガードも軽量のものを選ぶようにしよう。

上記の理由から、エペにおいて、短い剣を使う人はほとんどおらず、ショップでも、需要がほとんどないのだという。

各ショップに聞いた、初心者にオススメの剣について紹介

これまでエペにおける、剣の“硬さ”“長さ”についてご説明してきた。

その内容を踏まえ、この項目では、各ショップに聞いた、初心者におすすめの剣をご紹介していく。

各ショップによって、メリットが異なるので、ご自身にあった剣を選んでいただきたい。

東京フェンシング商会

東京フェンシング商会では、初心者にはアルスターの剣をおすすめしているとのこと。

値段的に言えば、”ウクライナ”の方が安いのだが、初心者に重要な剣の柔らかさで言えば、この”アルスター”の方が優れているのだという。

鉄の配合率の関係上、剣は柔らかい分、重量も軽くなる。

そのため、初心者が同ショップで剣を購入する際はこの”アルスター”を購入されることをオススメする。

【価格】
アルスター<フルセット> ¥12,560(税込)
アルスター<剣のみ> ¥8,900(税込)

詳細はコチラから

KFE京都フェンシング用品

KFEでは、初心者にウクライナをおすすめしているとのこと。

基本的に、そこまで硬くなく、フェンシング業界で言えば、入門編の剣とも言える。

東京フェンシング商会でも、値段重視の人はアルスターよりもウクライナを買っていく傾向にあるので、『最初は安い剣を使いたい!』ということであれば、このウクライナを購入することをおすすめする。

【価格】
ウクライナ<フルセット> 11,530円(税込)
ウクライナ<剣のみ> 7,400(税込)

詳細はコチラから

東京フェンサーズ

同店のオススメは、『レオンポール エトワール』

リーズナブルな剣に見られる、”サビやすい”という特徴がなく、剣も頑丈なので折れにくい

週一回練習をしていても、数年は折れないポテンシャルを持っている。

他のショップに比べると少し割高だが、最初に買う剣は、あまり手入れの必要がなく、長持ちするものが欲しいということであれば、レオンポール エトワールを購入することをおすすめする。

※フェンサーズでは、期間の取り決めなく、常時10パーセント引きをしているとのこと。

【価格】
レオンポール エトワール<フルセット> ¥16,700〜(税別)
レオンポール エトワール<剣のみ> ¥10,470〜(税別)

剣の寿命について

フェンシング業界では、『下手な選手と戦うと、剣の寿命が縮まる』と言われている。

これは、対戦することに慣れていない選手は、距離もわからず突っ込んできてしまう為、剣が受けるダメージも高くなってしまうということだ。

では、剣の寿命を上げるにはどうすればいいのか? これは”慣れる”しかないと思う。

筆者も中学からフェンシングを始めたが、最初の一年間はよく剣を折っていた。毎日練習していたので、剣一本の平均寿命は、3ヶ月ほど(※ウクライナを使用)。しかし、一年経つと、相手との距離がわかり始めたため、剣の寿命も半年ほどまで伸ばすことができた。

最初から上手く人を突ける人は、そういない。

練習を積み重ねることで、上達すればするほど、剣の寿命も延びていくといってもいい。

最後はフィーリング

剣を選ぶ際、最後に重要なのは、「自分の感覚とあうか」ということ。

フェンシングに慣れていないと、はっきりとは理解できないかもしれないが、レッスン、ファイティングを繰り返していくうちに、硬い剣の方がいいのか? 柔らかい剣の方が自分のスタイルに合っているのか? 体で解ってくる。

あとはショップに行って、実際に剣を触って決めるといいだろう。

先にも解説したが、もしもショップが近所にない場合は、電話で自分の好みを伝えるといい。

極力、要望に沿った剣をショプの人が選んでくれる。

また、注文する際は、剣が仕入れられたばかりか確認してみよう。

剣が仕入れされたばかりなら、選べるレパートリーが増える。そうなれば、ショップの人も数多くの剣の中からあなたの希望に沿った剣選びをしてくれる。
※上記の方法は種目を問わず、お願いすることができる。

この記事が、読んでくれた方の剣選びのお役に立てれば幸いだ。


【筆者主宰】騎士のスポーツ、フェンシングを始めませんか?

フェンシングというスポーツを知っていますか?

最初にイメージするのは、中世の剣士たちが繰り広げる激しいバトルだと思いますが、そのバトルをスポーツにしたものが、このフェンシングです。

剣をつかっているので、”チャンバラごっこ”に近いとも言われ、普段やりすぎると怒られるチャンバラごっこも、ここではやった分だけ褒められます。さらに、フェンシングは別名”筋肉を使ったチェス”とも言われており、相手の裏をかく戦いをすることから、頭を使う練習にも最適です。

墨田フェンシングクラブでは小学生から大学生までを中心に、全国トップクラスの実績を持つコーチが、フェンシングの指導を行っています。

あなたも、剣をつかった特殊なスポーツで、非日常を感じてみませんか?


ABOUTこの記事をかいた人

1989年生まれ、愛知県出身。中学から大学までフェンシング選手として活動し、高校で全国7位、大学時代には全国4位に入賞(両方とも種目はエペ)。現在はWEBメディアの編集者として、記事の執筆、編集などを行っている。プライベートでは墨田フェンシングクラブの代表を務め、子供から大人まで幅広い世代を指導するコーチとして活動している。