フェンシングの種目とは何か?競技者の目線から詳しく解説

フェンシング フルーレ 試合

フェンシングというと、”剣で突っつきあっているスポーツ”というイメージをお持ちではないだろうか?

それでも間違いではないが、実際は選手が身につけている装備が異なったり、攻撃方法も突くだけではなく、”斬る”場面があったりする。

なぜこのような違いがあるのか?

下記の動画をご覧いただきたい。

動画の通り、フェンシングは『エペ』『フルーレ』『サーブル』の3種目にわかれていて、それぞれ独自のルールで試合が執り行われる。

同じフェンシングであることに違いはないが、特徴や見どころ、実際にプレイする際の適正も異なる為、各競技の特徴を掴んでおいた方が、より深くフェンシングを楽しむことができる。

この記事では、フェンシングにおける各種目の特徴を、競技者の目線から紹介していきたい。

エペ

フェンシング エペ 試合

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エペは、世界的にもっとも競技人口が多い種目であり、”先に突いた方が勝ち”という極めてシンプルなルールであることが特徴だ。

有効面は体全体(いってしまえば足の裏も)。フルーレ、サーブルのように攻撃権もないことから、初心者に一番オススメできる種目と言える。

エペの醍醐味は、なんといっても『駆け引き』に特化したプレイスタイルだ。

ルールがシンプルな分、そう簡単に踏み込んだ攻撃ができない。その為、剣やフットワークで相手を乱し、スキができたところを突きにいく。

よくフェンシングは”筋肉を使ったチェス”に例えられるが、その要素を一番盛り込んでいる種目と言えるだろう。

・エペの有効面は体全体。(フルーレやサーブルと違い、金網のジャケットは着用しない)
・剣の長さは110cm以下、重量が770gと種目の中でも最重量級。ガードの直径は13.5cm、ガードから先端までは90cm以下。

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フルーレ

フェンシング フルーレ 試合

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フルーレは、あの太田雄貴氏が北京、ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得した種目であり、日本では一番ポピュラーな種目だ。

その特徴は、『攻撃の優先権の尊重』にある。

『攻撃の優先権(※以下、攻撃権)』とは、持っている方が有利になる、アドバンテージ(優位に立っている)のようなものだ。

例えば、選手AとBが対決しているとする。選手Aは先に動き、選手Bは後退した。この場合、先に動いた選手Aに攻撃権がある。

その状態で同時に突いたとしても、選手Aのポイントとなる。

では、選手Bが優先権を得る為にはどうすればいいか?答えはシンプルで、相手の剣に触れればいい。

たとえ攻撃権を得た選手Aが選手Bを突きにいったとしても、その剣を叩いて突き返してしまえば、攻撃権が移って、選手Bの勝利となる。

こうした攻撃-防御-反撃-再反撃といった瞬時の技の動作の応酬がフルーレの面白みと言える。

・フルーレの有効面は胴体のみ。(試合時にジャケットという金網でできたものを着用し、マスクも喉元を覆う布にメタルビブ<金網>がついた、専用のものを使用する。)
・剣の長さは110cm以下で、重量500g以下と比較的軽め。ガード(つば)部分も直径12cmと3種目の中でも一番小さい部類に入る。ガードから先端までは90cm以下(エペと同じくらい)、3種目の中でも細身で軽く、扱いやすいのが特徴。

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サーブル

サーブルは3種目中、最速の競技だ。

試合は始まった瞬間、いかに早く、相手を制せるかが重要になってくる。

フルーレ、エペとの違いは、突く以外に”斬る”という攻撃手段があることだ。上半身全体が有効面となる為、主に頭、腕、胴体などを狙う。

また、フルーレ同様攻撃権があるので、試合を有利に運ぶには、先に動いて相手に剣を向けるか、相手の剣を叩く必要がある。

サーブルの魅力はなんといってもそのダイナミックさ。『斬る』という動作が加わったことで、映画に出てくるようなフェンシングの動きを垣間見ることができる。

また、3種目中もっとも決着がつくのが早い為、試合展開がスピーディーなことも特徴だ。

・サーブルの有効面は、上半身全体。(サーブルでは腕も有効面になる為、専用の金網のジャケット、マスクを着用する。)
・剣の長さは105cm以下で、重量は500g以下。ガードは直径14cm、先端までは88cm以下となっており、手の甲を覆う形をしているのが特徴。

フェンシング選手の競技事情について

フェンシングの種目には上記の通り3種類あるが、大体は”フルーレ”から始めるのが定番だ。

これはフェンシングに必要な基礎をフルーレで身につけられる為であり、学校の部活動やフェンシング練習場においても、フルーレから教えることが多い。

他の種目を始めるのは、フェンシングを始めてから1〜2年経った頃で、フルーレにも慣れてきたタイミングだ。

まず、指導者がその選手の特性を見ることから始まる。筆者が所属していた練習場では、精密な攻撃ができていたら”フルーレ”。アタックした後、腕を曲げずに相手に剣を向けている選手は”エペ”。アタックに伸びがあり、攻撃が早い選手は”サーブル”といった区分けがされていた。

後は実際の試合で、その選手の特性を図っていくわけである。

【これからフェンシングを始めたいという方へ】最初の種目は、始める目的によって変わる

前の項目で、フェンシングを始める際は”フルーレ”からというお話しをしたが、これはあくまでこれまでのフェンシング業界の傾向であり、これからフェンシングを始める人がこれに当てはまると言うわけではない。

例えば、社会人からフェンシングを始めた場合、ルールがシンプルで、用具の費用も安い、エペから始める人が多い。

”いや、フルーレから始めた方がいいのであれば、自身もそうしたい”という人もいるかもしれないが、実は世界基準では”エペ”から始めるのが常識なのだ。

日本にフルーレから始める文化があるのは、胴体という限られた有効面を突きに行く繊細な特性が、手先の器用な日本人によく合っているからである。

ただ、2000年代に入ってからは、エペ、サーブルから始める人も増加傾向にある。

最初の種目は、始める目的によって変わる。”斬る動作を極めたい”と思えば、サーブルから始め、”エペで日本代表になりたい”と思えば、エペから始めるのも当然アリだ。

フェンシングで一番重要なのは”楽しむこと”。

この記事が、フェンシングへの興味持つきっかけになってもらえれば、この記事を書いた身として、これほど嬉しいことはない。


【筆者主宰】騎士のスポーツ、フェンシングを始めませんか?

フェンシングというスポーツを知っていますか?

最初にイメージするのは、中世の剣士たちが繰り広げる激しいバトルだと思いますが、そのバトルをスポーツにしたものが、このフェンシングです。

剣をつかっているので、”チャンバラごっこ”に近いとも言われ、普段やりすぎると怒られるチャンバラごっこも、ここではやった分だけ褒められます。さらに、フェンシングは別名”筋肉を使ったチェス”とも言われており、相手の裏をかく戦いをすることから、頭を使う練習にも最適です。

墨田フェンシングクラブでは小学生から大学生までを中心に、全国トップクラスの実績を持つコーチが、フェンシングの指導を行っています。

あなたも、剣をつかった特殊なスポーツで、非日常を感じてみませんか?


ABOUTこの記事をかいた人

1989年生まれ、愛知県出身。中学から大学までフェンシング選手として活動し、高校で全国7位、大学時代には全国4位に入賞(両方とも種目はエペ)。現在はWEBメディアの編集者として、記事の執筆、編集などを行っている。プライベートでは墨田フェンシングクラブの代表を務め、子供から大人まで幅広い世代を指導するコーチとして活動している。