これまでフェンシングの種目における”フルーレ”、”エペ”の剣の選び方について紹介してきたが、今回は3種目中最後となる、サーブル剣の選び方について紹介していく。
ただ、サーブル剣の選び方を書くだけではあまりにも物足りないので、サーブルがどのような世代に需要があるのか?また、どのような特性があるのかまで、実際に筆者が集めてきた情報もまとめていきたいと思う。
これからサーブルを始める予定の人、もしくはフェンシングの”斬る”という動作に興味のある人には是非読んでもらいたい。
目次
サーブルとは
サーブルとはフェンシング3種目の中でも”最速”と言われている種目だ。
なぜ最速なのか?下記の動画をご覧いただきたい。
ご覧の通り、試合が開始された途端、どちらの選手も勢い良く攻めているのがわかる。『フルーレも早いよ!』と言われる方もいるかもしれないが、侮ることなかれ、サーブルの方が早い。
なぜなら、”速攻の質”に差があるからだ。例えばフルーレは、ゆっくりから速く、速くからゆっくりと緩急をつけて攻撃を行う場合が多いが、サーブルは緩急どころではない。勢いに乗ったまま、いきなり仕留めにかかるのだ。
この種目の恐ろしさは、速さと攻撃権、さらに”斬る”という動作が加わることから、熟練度が重要になってくる、つまり試合になれば、実力差がモロに出てしまうのだ。
フェンシングには、実力で勝っていたとしても、勝利に直結するとは限らない要素がある。特に”エペ”にはその傾向が強く見られ、百戦錬磨の選手であっても、相性によっては負けてしまうこともある。フェンシング業界ではこれを”奇跡が起きる”と表現するが、サーブルには、こうした”奇跡’が一切ない。そう、サーブルはフェンシング種目最速にして、最もシビアな種目とも言えるのだ。
サーブルは基本的に有効面が上半身全体とされ、マスク(頭)から胴体、腕のどこかしらを突く、もしくは斬るなどすれば勝ちとなる。この種目の難しいところは、フルーレ同様、”攻撃権がある”ということだろう。攻撃権とは持っている方が有利になる、アドバンテージ(優位に立っている)のようなもので、サーブルの場合、同時に斬ったり、突いたりした場合、この攻撃権を持っていた方が勝ちとなる。
サーブルで使用する剣の特徴
剣の長さは105cm以下で、重量は500g以下。ガードは直径14cm、先端までは88cm以下となっており、手の甲を覆う形をしているのが特徴。
サーブル剣を選ぶコツは?
ここまでサーブルとはどういうものかについてご紹介してきたが、ここからはより具体的に、サーブル剣の選び方や、剣の寿命について紹介していく。
剣を選ぶ基準
サーブル剣は、フルーレやエペと違い、硬い剣を購入する人はほとんどおらず、大体が柔らかい剣を購入する。
これは、振込もしやすく、軽くもなる特性をもつ柔らかい剣が、”最速の種目”であるサーブルにうってつけと言えるからだ。
そのため、剣を選ぶ際は、床に剣先をつけてしならせてから、自分の感覚にあった、柔らかい剣を選ぶことをお勧めする。
もしも近くにフェンシングショップがない場合は、ショップの店員さんに柔らかい剣を選んでもらうようお願いしよう。
また、長さについては一番長い剣(5号剣)しか購入されない。
その理由として、エペと同様、剣が短いと、その分試合では不利になってしまうためだ。だからこそ全員が、一番長い5号剣を使用している。
剣の寿命について
週5以上で本格的にやるとなると、大体1ヶ月程度で折れるが、週1回の練習でやれば、長くもつ場合もある。
先に説明した通り、サーブル剣は、柔らかい剣を選ぶのが良いとされているが、柔らかい分、折れやすいというのが1つのデメリットとも言える。
では、いよいよ次の項目から、各フェンシングショップで聞いた、オススメの剣について紹介していく。
各ショップに聞いた、初心者にオススメの剣について紹介
東京フェンシング商会
東京フェンシング商会では、初心者向けに『ウクライナ』をオススメしている。
その理由は、フルーレと同様になってしまうが『安い』からであり、さらにサーブルは他の種目と違って、剣がよく折れるため、安い剣をたくさん買うという傾向が強いそうだ。
これからサーブルを始める方は、なるべく自分の感覚にあった安い剣を選ぶのがいいのかもしれない。
・サーブルブレード ウクライナ(剣単体)¥4,500 (税込)
・サーブル電気剣セット ウクライナ(標準セット)¥9,680(税込)
※ガードから持ち手まで全てついている状態
剣の価格表はコチラ!
KFE京都フェンシング用品
KFE京都フェンシング用品では、初心者向けに『PBT ウクライナ』をオススメしている。
この剣が人気の理由は、ひとえに”錆びにくい”ところにある。サーブル剣はさび止加工されていないものが多いため、剣を磨く手間が求められるが、この剣ではそれがない。
特に色違いのウクライナカラー(ブルー)が人気なのだという。
※ウクライナカラー(ブルー)は通常のウクライナより、300円ほど高くなる。あまりにも人気で在庫がない場合もあるので、注文する際は同店に一度連絡することをオススメする。
・PBT ウクライナ 4,600円(税込)
・ウクライナカラー(ブルー) 4,900円(税込)
※剣単体の状態
・PBT/ウクライナ (ゴム巻フレンチ)11,530円(税込)
※ガードから持ち手まで全てついている状態
剣の価格表はコチラ!
フェンサーズ
フェンサーズには、2本お勧めの剣がある。
下記に詳細を記していこう。
・レオンポール カメレオン(剣単体)¥6,000(税別)
・レオンポール カメレオン(フルセット)¥12,660(税別)
※重さは、サーブル剣の中でも平均くらい
※色は青緑っぽい
・レオンポール Zagnis Pro(剣単体)¥6,700(税別)
・レオンポール Zagnis Pro(フルセット)¥13,360(税別)
※重量は軽い。
※色は茶色いとのこと。
サーブルはどの世代に需要があるか?
各ショップに話しを聞いたところ、最近サーブルのチャレンジカップ(試合)が増えてきているため、高校生がサーブル剣を購入する場合が増えてきているそうだ。
記事の序盤に、剣はほとんど5号剣しか使われないというお話をしたが、実は始める世代も関係している。そう、フルーレとは違い、サーブルはジュニア(小学生〜中学生)で始める選手がほとんどいない。だからこそ、大人用の一番長い剣(5号剣)が購入されるというわけだ。
しかし、今後ジュニア向けのサーブルの試合が増えるのであれば、短い剣の需要が増すかもしれない。
まとめ
これまでサーブルの記事を書いたことはあまりなかったが、色々と話を聞いていると、やはりフェンシング業界に変化が訪れていることが実感できる。
今はフルーレが一番日本で人気だが、もしかしたらエペ、サーブルも同じくらい普及するかもしれない。
まだどうなるかはわからないが、着実にフルーレ以外の種目を始める子供たちも増えてきている。
筆者は現役時代、エペの選手であったが、今回ご紹介したサーブルも、今後普及してくれれば、フェンシング業界はますます面白くなるかもしれない。